次世代MSXについて現在明かされていること

 前回書いた次世代MSXだが、西和彦氏が言ってるだけではないかと思うかもしれない。しかしD4エンタープライズ代表取締役鈴木直人氏がインタビューに答えている。
igcc.jp

鈴木 実は今「1 chip MSX」の次の構想があり、D4と西さんとで設計をしている最中です。2019年内には、具体的な次のMSXハードを提案できると思います。

――ビッグニュースですね! 復刻してくださいという声は多かったと思うんですが、それが叶うということですね。

鈴木 形自体はまったく別ですし、アーキテクチャもちょっと違うんですけども、かなり「えっ!?」と言わせるハードウェアを提案できるかと思います。プロジェクトEGGも初動から連動するような仕様で今、動いています。

https://igcc.jp/d4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA2/

 西和彦氏のサイトでの記述は以下の通り。

#143 次世代MSXとIoT MSX
2018-08-07
次世代のMSXを開発している。CPUはARMとR800FPGAの上で何にでもプログラムできるハードウェアでRaspberry Piと同じ大きさの基盤にした。年内に発表したいと思っている。名前は未定。

IoTの分野とMSXとの接点は、ワンチップでMSXと無線通信機能を一体化した5ミリ角のシリコンチップのダイを開発中である。来年の秋ぐらいまでに発表したい。組込用のコントローラーとして。

#144 次世代MSXとIoT MSX その2
2018-08-28
次世代MSXについて書いたらかなりの反響だったので、もう少し詳しく書くことにしたい。Raspberry Piの大きさで、電源はAC48V。基板の上にAC-DCコンバーター搭載して、USB3.0の電源供給もカバー。ザイリンクスのPGAを搭載。EthernetWiFiBluetoothUSB3.0。100ピン多目的Busコネクター。基板を64枚スタックするとマルチプロセッサーになる。OSはWindows10、LinuxMSX OS(MSX DOSの進化形)。FPGAソースコードはオープンにする。LinuxMSX OSもソースコードはオープンにする。オンラインのグループウェアを提供。情報交換と情報公開のプラットフォームにする。D4E社に協賛してもらってゲームソフトウェアを安価に提供の予定。Cコンパイラを調整中。MSX BASICライセンス予定。CPUはARMとR800

http://nishi.org/

 西氏が作っているのは2種類。次世代MSXとIoT MSXである。IoT MSXは組み込み用のチップであって、パソコンとは別物だ。問題は次世代MSXの方である。この文章はあえて曖昧にしているのかもしれないが、どうも実態がよくわからない。CPUはARMとR800とあるが、これをザイリンクスのFPGA上にすべて記述するのか、それともCPUは普通に作られたものを搭載して、それとは別にFPGAを搭載するのか。どうもFPGA上にCPUコアを載せてしまうように読めるのだがどうだろうか。少しあとの方のコラムに、MSXの事とは明示されていないが以下の記述がある。

#263 35ドルのコンピュータのこれから
2019-06-11
大ヒットとなった英国のワンボードコンピューター、ラズベリーPiの後を追って類似の商品がたくさん出てきた。ARMのCPUの数が現行は4つであるが、これが増えたものが1つの方向。もう一つはCPUがARMではなくx86でフルWindowsが動くものもある。私はこれが大好きだ。では、東大のラボで何を作るのか。私が今作っているのは巨大なFPGAを搭載し、高速のBUS構造を持ったアーキテクチャをソフトウェアでプログラミングできるワンボードコンピューターを設計している。年内に発表し、試作品を世界中に届けたい。東大の生協と楽天と、amazonで。

http://nishi.org/

 この「巨大なFPGAを搭載し、高速のBUS構造を持ったアーキテクチャをソフトウェアでプログラミングできるワンボードコンピューター」が次世代MSXではないかと思われる。Windows 10を動かすようなARMコアをR800とともに乗せるなら、「巨大なFPGA」を使うのもわかる。D4Eの鈴木氏が「2019年内に」と言っている事とも符合する。

 とにかく、次世代MSXは、ラズパイサイズでFPGAを使った、64枚スタックできる基板ということになる。(64枚スタックするとマルチプロセッサになるという意味がよくわからない。64枚ないとマルチプロセッサにならないのだろうか??)また、基板をスタックするということは、基板上にはMSXのカートリッジスロットは配置されないのだろうか。いやラズパイサイズだったら多分載せるスペースが足らないだろうけど。

 あとVDPについて何も語っていないのが気になる。今CPUやOSまで変えてV9958でもあるまい。V9990でもたかだかVGA解像度、しかもインターレースモードである。単に昔のMSXシリーズの再現ならそれでいいとしても、今の時代にわざわざ次世代として発表するならフルHD対応は最低限、下手すると4Kくらいは期待されるのではないか。ただ、D4Eを通して旧作ゲームの配信を考えているようなので、V9958互換機能は必須になるだろう。あるいは旧作ゲームはARM上で動くWindowsLinuxでのエミュレーションになるのかもしれない。D4EのプロジェクトEGGはそもそもエミュレーションで動いているし。搭載するARMが、実チップであるかFPGA上のIPコアであるかはさておき、それがラズパイと同様にGPUのVideoCoreまで搭載しているなら、V9958エミュレーションくらいは楽にこなせるはずだ。

 この考えが正しければ、カートリッジスロットはなし。旧作ゲームは配信で遊ぶ。新MSXとしての機能は旧MSXとの互換性が低いか、もしかしたらほとんどないかもしれない。旧MSX-DOSソフトは機種ごとにグラフィック環境がバラバラだった時代のCP/MMS-DOSのように、テキストを使うものくらいしか動かないかも。メモリーマッパーなんかも廃止されてR800MMUを使うかもしれない(R800は内蔵MMUで16MBまで使えたはず。turbo Rでは互換性のためにこの機能は使われなかった)。そもそもZ80を載せないのであれば、R800Z80に比べて高速であるだけで非互換性が出てしまう。MSX2+までZ80 3.58MHzで固定だったため、アクションゲームなどは実時間で制御していないものが大半だろう。だからturbo RではZ80R800を切り替えて使っていたわけで。そこまでいくと「どこがMSXなんだろう」となるかもしれないけど。