GIFの衰退と復活とその先

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Youtubeでこういう「おもしろGIFまとめ動画」見て思ったのだけど、GIFってしぶといな。

 GIFって、もともと、インターネット普及以前のパソコン通信時代に、アメリカの大手通信サービス「CompuServe」で作られた画像フォーマットなのだけど、まだ当時パソコンの色数が16色とか64色とかが当たり前で、気張って1670万色中256色同時表示可能なフォーマット作ったんだよね。なので当時としては必要十分な規格だったのだけど、写真やビデオから変換するには不足で、なので実写映像は一旦256色に減色する必要がある。なめらかに色が変化する実写をGIFにする場合、グラデーションが急に変化する階段状の色変化にするか、ディザをかけてごまかすかたちで使われていた。ただ、GIFは動画フォーマットではなく、静止画フォーマットだったのだけど、複数の画像を一つのファイルにまとめる規格も初期の頃に作られ、これがGIFアニメーションとして制定された。当時最先端のLZW圧縮技術を採用して、ファイルサイズも小さくできて、パソコン用画像フォーマットとして成功した。

 1990年代に入ると、インターネットの爆発的普及をもたらした、ワールドワイド・ウェブが登場し、それを扱うソフトとしてNCSA MOSAICが登場したとき、テキストとGIF画像は一緒に表示できた。当時は文字と画像が一つの画面に適切なレイアウトで表示できることがすごいことだった。初期のMOSAICは、画像としてはGIFのみをインラインで表示していたと記憶している。非可逆圧縮で1670万色を表示できるJPEG画像は外部アプリに任せるみたいな形だったんじゃなかったかしらん。
 NetScapeが登場して、JPEGもGIFも一つの画面に表示できるようになるのだけど、この当時からGIFはアニメーションも扱えたので、Web画面で蝋燭の炎を揺らめかせたりといった演出に使われていた。WebブラウザGIFアニメーションを最初期から動画として再生する機能を備えていたので、GIFはWebとともに普及していた。これが普及してメジャーになってきたとき、特許権という爆弾が炸裂する。GIFが使用いていたLZW圧縮技術の特許を持っていたUNISYS。当初特許料の徴収をしない方針だったのに、GIFが大きく普及してくるといきなり高額な特許料を徴収すると宣言。最初は大手企業に的を絞っていたけど、別に金儲けしてないフリーソフトウェア制作者でも特許使用料を支払うべきみたいな方向になっていって、世界中でGIFボイコットの動きが起きます。このころ、LZW特許を使わない画像フォーマットとして、PNGが登場し、「GIFを捨ててPNGを使おう」っておおきな運動が起こる。PNGはより新しい規格であり、より高圧縮で、かつ256色制限がなかった。1670万色フルカラーも扱えた。

 画像フォーマットって、普及している規格が強いんです。よりいい規格を提唱しても、なかなか置き換わらない。でもこのときは、GIF使い続ければ高額な特許料の支払いがあるというので、驚くほどの勢いでPNGへの置き換えが起きた。UNISYSのLZW特許は2003年から2004年にかけて米国と日本で特許切れになる。しかしもう256色しか使えないGIFは時代遅れの規格として過去のものになっていた。と思われたのだけど…

 2000年代後半からスマホを中心とするSNSでGIFが再評価されてくる。ショート動画でリピートされる「ちょっとおもしろい動画」としてのGIFが人気になってくる。GIFアニメーションはもともと静止画におまけで動画規格を混ぜたものなので、昔から短いループが主流だし、この手軽さが重宝された。また、スマホアプリで使いやすいブラウザエンジンはもともとGIFアニメーションをデコードできていた。HTMLの歴史上、IMGタグは最初期からあったが、Videoタグはかなり後に追加されたものだ、ただの画像として扱える動画というのは重宝されただろう。

 GIFの地位を奪ったPNGだが、当初からアニメーションも構想されていた。MNGというPNGの動画拡張規格があった。だけどこの規格はなかなか正式にならず、APNGという別の規格が生まれるなど、いろいろゴタゴタした。これではPNGアニメーションを安心して使用できない。アニメーションGIFの256色しか表示できず画面がザラザラするとか、アルファチャンネルがないので背景と綺麗に合成できないなんて欠点はSNSで「ちょっとおもしろいショート動画」として使う分にはどーでもいいということで、あれほどみんなが忌み嫌ったGIFが復活することになったのだなあと思うといろいろ感慨深いものである。