夢の8ビットコンピューター製造計画を見た

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Commander X16 というコンピューター。8-Bit Guy という技術系Youtuberが提唱したものなのだけど、なかなかに面白い。8-Bit Guyはそもそもレトロパソコンの紹介やレストア動画を上げている人で、Commodoreの8ビットコンピュータが好きらしい。つまり自分たちが子供の頃に弄り回した8ビットパソコンを現代の人たちにも提供したいという動機のようだ。
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夢のコンピューターを作る Part1

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夢のコンピューターを作る Part2

(最近のYoutube自動翻訳は以前に比べるとわりとまともで理解できる文章を生成するので、日本語字幕にして見るとよい。)

 これらの動画を見ると、視聴者にヴィンテージコンピューターのおすすめをよく聞かれるが、中古のそれらはどんどん値上がりしているし、専用モニターが必用だったりフロッピーやカセットなどのレガシーで扱いにくいデバイスに依存している、そもそも経年劣化で動かないものも多く、あまりおすすめできない。じゃあ現役のパーツで、VGAもしくはHDMIに出力でき、現代的なストレージに保存できるようなシステムを作ったら楽しいんじゃないかとそういう感じ。コモドールのパソコンに似たものにはするが、あくまで新規にパソコンというものの仕組みやプログラミングの楽しさを学ぶのが目的なので、C64などの実在のパソコンと互換性を保つ必要はなかろう。そんな感じで設計が進んでいく。CPUは6502。メモリを大きく取りたいので65816もいいけど、アドレスの上位8ビットがデータと同じピンで、これをデコードする回路つけるのめっちゃ大変だからやっぱ6502。あと昔のパソコンはビデオ出力に自社製特殊チップを使用していて、現代においてそれらは入手が難しい。できればディスクリート部品のみで作成したいがビデオ回路はFPGAを使用してもいいんじゃないかと関係者に声をかけて、Veraというビデオボードが開発される。これは640✖480のビットマップまたはタイルグラフィックとスプライトが扱え、最大256色出力可能。なお、ビデオボード側に128KBのVRAMを搭載して、CPU側からはIOポート通じてアクセスすることになる。なんか徐々にMSXめいてきたぞこれ。

 なお、サウンドチップもC64で有名なSIDチップはコモドール製の音源で現在では新品の入手が不可能なので、AY-3-8910を搭載する方向で進んでいく。ますますMSXだこれ。と思ったが、周波数を8MHzにしようとしたらうまく動かないので、最終完成品では使用しないことになったとか。クロックを分周して音源部分に制御回路つければいいのだろうけど、できるだけシンプルにという方向性から、音源を変えることになる模様だ。6502の現代バージョンである65C02Sは最高14MHzまで動作するらしく、これを8MHzで動かしたいらしい。ちなみにRAMは今の時代なので8ビットコンピューターに搭載する量ならSRAMでも1000円とか2000円とかで買える。なのでSRAMを採用していて、ボード全体で8MHz走らせてもノーウェイトだ。なるほど、まさにあの頃から考えたら夢の8ビットパソコンだ。

 最終目標は$50~$100で販売できるシンプルな8ビットコンピューターだが、これを三段階で考えて、最初はMicro-ATXサイズのボードにDIPパッケージのICを載せて試作。次に表面実装部品を使ったMini-ITXサイズのボードを作って、最終的にはFPGA化してラズパイサイズの小さく安いものを作り上げるという計画。既存のマザーボードサイズに合わせているのは既存のPCケースを使えるようにという考えもあるっぽい。

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段階的リリースの図

 メモリーマップがなかなかふるっていて面白い。

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Commander X16 メモリーマップ

40KB弱の連続エリアを確保して、そこをBASIC用プログラム格納領域にする。少ないと思うだろうが、BASICで40KB超えるプログラムを見たことがないと語る8-Bit Guy。I/Oエリアを挟んで8KBをバンク切り替えで256バンク、最大2MB扱えるようにする。そこにマップや画像などを格納しておけばいい。その後ろにはこれもバンク切り替えで各種ROMルーチンが収められる。

 ハードウェアはまだ試作中だが、エミュレーターが提供されているので、どんなコンピューターなのかいじってみることはできる。現状残念ながら日本語配列キーボードをサポートしていないので、BASICでプログラムを打ち込むだけでもダブルクオートやら+やらがどこにあるのか手探りで探す必要がある。また、日本ではVIC-1001以降コモドールのパソコンは国内メーカー製に押されて半ば撤退状態。アメリカほどPETやVIC,C64を経験した人がおらず、昔の記憶でスイスイいじれるという人は少ないと思われる。とはいってもなんというかワクワクする企画である。