MSXの中古価格が偉い高騰している&次世代MSX

近年、8ビット時代のレトロパソコンが人気だ。その流れで、MSXの中古価格が偉いことになっている。30年前の新品価格並で売られていることがある。MSX最終規格、turbo RのPanasonic FS-A1STが不具合有りで8万円とかそんな感じ。こないだなんてアマゾンでMSX1のSONY HB-101が87500円で売られていた。

8ビットパソコンは、日立、シャープ、NEC富士通が先行して殆どのシェアを握り、参入が遅れたメーカーはなかなか入り込めなかった。そこでマイクロソフトアスキーが共通企画としてMSXを提唱し、家電メーカーが我先に参入することになる。比較的低価格でゲーム向けのパソコン規格になったので、各社からかなりの数が販売された。ただゲーム機としては性能でファミコンに負けていたし、表現力を増したMSX2MSX2+MSX turbo Rといった後継規格が出るたびに対応メーカーが減り続ける。MSX2で色数とか増しても、性能が変わらなかったので多色モードを使うと遅くなるし、コナミなんかはかなり末期までシューティングゲームはMSX1の規格で作り続けていた。あとの規格になるほどメーカーも台数も少なくなるので、どれでも動く最初のMSX1に合わせてゲームが作られていたわけだ。まして時代は16ビットパソコンがあたりまえになる1990年。この年発表されたMSX turbo Rに対応する機種は、とうとうパナソニック一社からしか発売されなかった。

そんなこんなで、10年くらい前まで、MSXは中古パソコン市場なんかでも見向きもされない。ハードオフでジャンクコーナーに1000円で投げ売りされるようなものだったのだ。

ちなみに僕は1986年に29800円という激安価格で発売された、MSX2のFS-A1を買った。この機種は一体型でFDDもなかったので、外付けFDDとRGBモニターをセットで買ったら、合計で約10万円になって「くそ」と思った記憶がある。なお、このパソコンのイメージキャラクターは、なんかマッチョでむさ苦しいアシュギーネという親父だった。
f:id:juangotoh:20191105013145j:plain
このパソコン使ってたころ、アスキーが運営していたパソコン通信のASCII NETから、MSXのユーザー向けのMSX NETを独立させるという話が出て、南青山のASCIIに呼び出された。MSX NETのCOMIC SIGのSIGOPやってくれないかという話で、引き受けるならSONYのセパレート型MSX2。HB-F500を貸与するという。
f:id:juangotoh:20191105013758j:plain
もちろん引き受けましたよ。その後ASCII NETはASCII NET PCSに、MSX NETはASCII NET MSXに名前が変わり、やがてパソコン通信サービス自体を終了。貸与されたHB-F500は返せと言われることもなく引っ越しするたび持っていったのだけど、押し入れにしまわれて、最終的に廃棄しました。最初に自分で買った29800円のFS-A1もとっくに捨てた。こいつらいまでも持ってたら、合計10万円以上で売れたんじゃねえかなあ。捨てるまで故障もしなかったし。

MSXは21世紀が始まる頃にはほぼ無価値のジャンクに成り果てていた。しかしこの安いパソコンでゲームをして、プログラミングを学んだ世代が忘れずに大人になって、2006年の1チップMSXに結実する。これ、MSXの生みの親、西和彦氏が結構乗り気で規格承認して推し進めたんだけど、当時思ったほど予約注文集まらなくて、西さんうっちゃったんだよね。でもいざ売り出されたら即座に5000個完売。こういうのに需要があるというのが浮き彫りになった。

その後レトロゲームやレトロPCはFPGAでロジック構築する流れから、Raspberry piのようなSoCボードでエミュレーションするほうが簡単という流れになる。任天堂ファミコンスーファミのエミュ機を出す。HAL研がMZ-80やPC-8001のエミュ機を出す。だから、次にMSX公式の機械が出るなら、やっぱソフトウェアエミュレーターになると思ったのだけど、どうも西和彦氏は違うことを考えているようだ。

nishi.org
コラムの#143,#144に次世代MSX開発中という話が出ている。FPGAで、ARMとR800を実装するらしい。OSはWindows 10、LinuxMSX OS(MSX DOSの進化系)とのこと。
これはもうMSXの再現ではないだろう。turbo Rは互換性のためにZ80R800を切り替えていた。ARMとR800では、旧MSXシリーズとの互換性を切り捨てたと思える。MSXWindowsLinuxは必要なのか。ほんとうに次世代MSXを作る気なのだろうか。そもそもLinuxWindowsが動くARMコアをR800とともに載せられるFPGAマシンって、リーズナブルな値段で作れるのか?

2019年中にも発表されると言われている次世代MSX。いったいどんなものになるのか楽しみなような不安なような。