勇者王ガオガイガーというオタク最強アニメ
「勇者王ガオガイガー」は1997年に放送開始されたロボットアニメである。これはサンライズの勇者シリーズ最終作で、勇者シリーズは、ガンダムから始まるリアルロボット志向からは離れ、子供が主人公のスーパーロボット回帰路線の作品群だった。のだけど。
この作品、すさまじいパロディ・オマージュに溢れたオタク志向の作品になっていたのだ。
まずガオガイガーというロボット。黒くて禍々しいデザインはマジンガーZの系譜であり、マジンガーZが「神にも悪魔にもなれる」と作中で言及されたのと同様悪魔的なシルエットを誇る。そして第一話でいきなり敵ロボットを踏みつけ、翼を引きちぎるという。シレーヌの翼を引きちぎるデビルマンのオマージュをかます。以後敵の翼を引きちぎるのはTV最終回や、OVAガオガイガーファイナルでも踏襲される決めシーンになる。さらにファイナルにおいて、ガオガイガーは究極の破壊神と呼ばれ、ますますマジンガー的になる。
ガオガイガーの通常技に、ブロークンマグナムというロケットパンチがある。これは当然マジンガーZのオマージュだが、この名前、車田正美の「リングにかけろ」のフィニッシュブロー「ギャラクティカ・マグナム」のパクリである。バージョンアップしたスターガオガイガーになると「ブロークンファントム」であり、これも同じ「りんかけ」の「ギャラクティカ・ファントム」である。
巨大ロボットがまちなかで戦闘すると現実的に考えて偉い被害が出る。これをなんとかすべく開発されたのが「ディバイディングドライバー」。これを打ち込むと空間を湾曲させて直径10kmの戦闘空間を作り出せる。毎週東京が廃墟になってたら物語続かないだろうというオタクツッコミへの対処である。なんかすげえ。
当初敵幹部として登場した、やたら空を飛ぶことにこだわるピッツァ。90年代のアニメキャラとしては異様に鼻がでかい。これ、敵に洗脳されたかつてのサイボーグ戦士だったのだけど、同型サイボーグがかつてたくさんいたが、その生き残り。正式名称がJ-002って、サイボーグ009で飛行能力を持つ002ことジェットかよ!どおりで鼻でかいわけだよ。
サイボーグJとセットで宇宙戦艦Jアークがあるのだけど、この戦艦には生体コンピューターが搭載されていて、これがキャプテンハーロックのトチローのイメージ。もうなんでもありだよ。
ガオガイガーの中盤以降の必殺兵器、ゴルディオンハンマー。見た目は金色のピコピコハンマーなのだけど、これ、柳生博司会のクイズ番組、「100万円クイズハンター」の「ゴールデンハンマー」なんだわ。そんなあほらしいパロディ兵器だけど、正式名称が「グラビティショックウェーブ・ジェネレイティングツール」重力衝撃波であらゆる物質やエネルギーを光に変えてしまう凶悪兵器である。そしてそんな話をナレーションでぶっこむと、もう子供向けスーパーロボットアニメの枠をぶっとばしちゃうのだ。ちなみにナレーションは次元大介こと小林清志である。あの落ち着いたしぶい次元の声で毎週ひたすら暑い説明をかましてくれる。いったい誰に向けた作品なのか。
「成功率なんてのはたんなる目安だ。あとは勇気で補えばいい!」に代表されるカッコイイセリフ。こっぱずかしいけれと心地いい。とにかく燃える。中二病なんて言葉はそもそもみんなが燃えるものであって、恥じる必要はない。「待たせたな!」といえば「ガイ兄ちゃん!!」と護少年が返してくれるのだ。
ガオガイガーは、結局従来の勇者シリーズの視聴者層たる少年にあまり受けず、玩具が売れなかったことで、勇者シリーズを終わらせたと言われているけれど、まさに当時幼児だったうちの息子ははまってたし、ジャスコの児童コーナーでガイガーいじってたし、マイクサウンダース13世のおもちゃ、バリバリーンつきで買わされたし、それほど間違ってはいなかったと思う。というか親が夢中になって見ていた。
そんな勇者王ガオガイガー。OVAのファイナルの最後、勇者王たちは宇宙の彼方に置き去りになるが、続きを予感させるエンディングで締められている。売れ行きによっては続きの予定もあったらしいので、ぜひなんとか続いてほしいものである。