「二度目の人生を異世界で」騒動に見られるヘイトの「常識化」

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 アニメの声優が降板するなど、炎上している「二度目の人生を異世界で」だが、上記ブログにあるように、大戦中に3000人斬殺した人物が主人公であるという点と、また、作者がTwitter上でヘイト言論を行っていた事で問題になったわけだ。実は作中で主人公はバトルマニアっぽいところはあるものの、わりと普通に主人公してるので、この設定正直いらなかったりするのだが、それはさておいて。

 「小説家になろう」等のWeb小説で、主に中国韓国が登場する際に、2000年代以降のネット言論の影響が結構見受けられる。具体的な作品名をあげると炎上して続きが読めなくなる恐れがあるのでここでは避けるが、たとえば異世界で勇者をした日本人青年が、日本に戻ってきて社会の悪と戦うある作品では、主人公の活動がマスコミに無視もしくは悪意を持って喧伝される。実はマスコミに悪を行ってる「K国」や「C国」の人間が大量に混じっており、政治家にも影響を及ぼしてるという具合で、「マスコミ、野党、はては与党のアジア宥和派が特定アジアの手先となって反日工作をしている」というネット上の言論をトレースした設定が使われる。
 別の作品で、異世界で活動する元日本人が、日本とのゲートが開いて日本と行き来することになるが、この作品では中国を「中ノ華」という国名で、非道な軍事侵略国家として描き、日本のマスコミや政府にもスパイがわんさかいて、主人公は工作員に悩まされる。公安の一部なんかは味方してくれるのだが、日本の民衆や政府が中ノ華の手先に扇動されてるのでなかなかにやっかいという感じ。
 また別の作品で、異世界の魔族を率いる女王の治める小国の話がある。この国は人間の国に負けて弱っている。かつて支配していたゴブリンの小国は人間の国に鞍替えして全く正当性のないところでもやたらとうるさく騒いで「謝罪と賠償」を要求する。あきらかにネット上の韓国イメージを投影している。


 これらの作品の作者は必ずしも差別主義者であるわけではないだろう。読者が喜びそうな設定として中韓ヘイトを取り入れたのか、自分で信じているのかはわからないが、それは漠然としたネット上の雰囲気。中国や韓国を馬鹿にすれば楽しい、受けるという暗黙の合意を取り入れていると思われる。フィクションの設定であるし、それらのヘイト(作者は現実的なヘイトとは思っていないだろう)もフィクション上の悪役のわかりやすさであるとすれば、面白い作品の要素ではあるし、作品を中断させたくはない。だけど、中国や韓国出身の友達に、自分の作品を読んでもらったときにどう思われるか、すこしだけ考えてほしいと思う。