日本酒の等級が廃れた時代、1980年代

日本酒には昔、等級があった。もともと日中戦争とかの時代に水で薄めたりといった日本酒の質の低下が起こり、政府が等級審査をするようになったものである。当初アルコール度数と酒質で特級から五級まであったようだ。戦後は特級、一級、二級の三種類になった。まあ単純に特級酒が一番高級で、高価で、旨いとされ、二級酒は庶民の酒という扱いだったと思う。

で、まあ、等級が高いほうが酒税比率も高かったわけだが、日本酒では実質そんなにアルコール度数の違いもないし、機械的に分類するというより、特級、一級というランクを買うために税金を払うというシステムになっていたようだ。ちなみに二級は特級、一級に値しないものという分類なので、無審査だと自動的に二級酒ということになる。

 

1980年代あたりになると、純米酒吟醸酒のブームが起きるのだが、この頃、雑誌などのメディアで取り上げられ、「旨い酒」がプチブランド化するようになる。政府の等級にかかわらず旨いもの、もしくは話題になったものは売れるとなる。それまではTVや新聞で大々的に宣伝してる全国区の酒か、地元酒蔵の定番というのが常にメジャーだったのだが、それ以外でも「これ旨いよ」という流れが生まれたわけだ。

 

さてそうなると、特級、一級という等級に意味はあるのかという話になる。1980年代半ばには、そういう政府公認の「うまさの印」に変わって「純米酒」「吟醸酒」というラベルが新たな「旨さの印」になっていた。この時代、「吟醸」とつけた名前の、「二級酒」が林立することになるのである。旨いと評判になり、実際売れるなら、税率の低い二級酒にしたほうが儲かるのである。消費者側の立場でも、税率が低ければ値段が安くなるのでうれしかった。

 

結果、日本酒の等級制度はやがて廃止される。今では「特級酒」なんてのはおっさんの思い出話にしか出てこないのである。

 

それはさておき、僕が学生時代阿佐ヶ谷の酒屋でいつも買っていた吟醸神鷹。720ml瓶で確か値段も安かったと思う。芳醇な吟醸香と軽い甘さのすごくおいしい酒だったのだが、今あれを見つけることができない。検索すると「神鷹」という酒はあるのだけど、兵庫のメーカーだ。僕が買ってた「神鷹」は千葉県のメーカーだったような気がするのだけど、誰か知りませんか?