宇宙戦艦ヤマト(旧&2199)における科学力、真田さんの異常性

そもそも宇宙戦艦ヤマトという作品は無理がある。いくら異星の技術を取り入れ、人類最後の力を結集したとは言え、たった一隻の戦艦で宇宙に覇を唱える軍事国家の支配する宙域を踏破し、成り行きというか必然というか、旧作では敵国を滅ぼすほどの戦果を上げるなんて無茶も良いところだ。それを可能にしたのは戦術に優れた沖田艦長の采配もあるが、なんといってもチート技術者、真田技師長であろう。

 

そもそもイスカンダルから送られたのはあくまで超光速航行を可能にする波動エンジンの設計図であって戦う力は与えられていない。ヤマト以前の地球の戦艦はガミラス駆逐艦に有効なダメージを与えることすら難しい状況だったのだ。ここにもたらされた波動エンジン。これを地球の技術者(おそらくここでの中心も真田さんだったろう)は強烈な武装に応用する。主砲のショックカノンがそもそもそれまでと違い、ほとんどの敵を一撃で屠る異様な威力を誇っているのだが、あれも波動エンジンの潤沢なエネルギーを使用できたことによるものではないかと思う。そして何と言っても波動砲である。波動エンジンはおそらくあの世界の恒星間宇宙船では一般的に使われているものであると思うのだが、あのような大量破壊兵器に応用した例は旧作では最終回のデスラー砲以外になかった。2199ではヤマトが使った時点で、ガミラスでも研究中の兵器であった事が明かされるが。また、2199ではヤマトの波動砲を発明したのが真田さんであることもはっきり言われている。さらに、2199では波動防壁という反則級のバリアを実用化している点も見逃せない。ガミラスもガトランティスもあのような防壁を展開している場面がないことから、あれを作ったのはほんとに真田さんだけなのだろう。まあ、あれは旧作最終回で使われ、あまりの反則技に以後存在がなかったことになってる空間磁力メッキの2199版なのだろうなあと思うけど。

 

真田さんの凄さは観察と応用。与えられた物を見た途端にその応用を考える力だと思う。波動エンジンの理論から、イスカンダルが過去の反省からどこにも技術供与しなかった波動砲を独力で思いついて実装する。ついでに波動防壁も作る。捕獲したガミロイドから対ガミロイド戦を想定したウィルスを作り上げる。ほんとに何かを見たら「あれもできる」「これもできる」「これに対抗するには」と考え、実装してしまえる天才といえよう。こういう人はどうも他国には少なそうだ。それでもガミラスは有能な技術者をそれなりに抱えてるっぽいし、大型の掘削機械をドリルミサイルにするなどの応用力もあるのだが、どうも2199のガトランティスはダメっぽい。

 

2199でガミラスが常にガトランティスを「蛮族」と呼称しているのに違和感があった。旧作ではガトランティスはアンドロメダからやってくる先進的な大国である。モデルはアメリカじゃないかと言われているくらいの国だったのだ。(ガミラス=ドイツ、ボラー=ソ連というのは共通認識だが、ガトランティス=アメリカは有力ではあるが異論もある説だ)

ところが、「星巡る方舟」で描かれたガトランティスは容姿や肩書(大都督、丞相)から古代中国やモンゴル帝国風の描かれ方をしていた。ガミラスを圧倒する火炎直撃砲を備えているが、これが攫ったガミラス人技術者を「科学奴隷」として開発させた瞬間物質移送器の派生物なのだ。ここから2199世界のガトランティスは科学技術に関して地力は弱く、他から奪ってばかりいるということが伺える。ヤマトと戦うときに「使えるものは科学奴隷として確保、他は全員殺せ」などと言ってるし、なるほど蛮族だわ。

 

ところで2199におけるイスカンダルは、かつて波動砲を使用して大マゼラン星雲を支配した事を悔いている設定なのだが、これはヤマトIIIにおけるシャルバート星の設定から来てるのだろうなあ。シャルバートはかつて高度に発達した武力で銀河を支配したが、それを反省して一切の武力を封印して隠遁、襲われても武力で対抗せず、結果滅んでもかまわないという覚悟を決めた設定になっている。今の時代に放映されたら、9条教とか言われて馬鹿にされるんではないだろうか。まあ当時もウケなくて話数半分に短縮されたんだけどね、ヤマトIII。