pixiv Sketch ライブはすごい

 2010年ころ、ニコ生やUstreamなどのリアルタイム動画配信サービスが流行りだしているのを見て、「あ、これ漫画家の作業を実況配信したら面白いんじゃないか」と思った。いや何が面白いと言われそうだけど、絵描きやその卵にとって、他人の絵の描き方を見るというのはすげえ参考になるし、絵を描くことに興味がなくても、漫画家とかのファンは先生の作業を見たいだろうと思ったのだ。商売になるような視聴率は得られなくても、需要はある。というか僕自身他の絵描きの作画作業は見たい。一応僕も漫画家なので、配信を実際にやろうと思った、のだが、この種のネットサービスというのは基本エロには厳しい。そして僕はエロ漫画家である。だいたいこの手のサービスでは、下手をするとおっぱいを描いただけでBANされる可能性があった。当時色々調べた所、Justin.tvには、配信がアダルト向けであるかどうかを設定する機能があり、こちらでアダルト向けとして配信すればいいのではないかという話があったのだが、規約を調べてみると、あくまでこの場合のアダルト設定は、トーク内容が子供に聞かせられないようなもの、暴力的な言葉などを含む場合の設定であって、ヌード画像などを配信してはいけないとなっていた。日本のサービスでも、ニコ生などが当時からあったが、やはりエロは厳しい。結局エロマンガの作業過程を生配信できるプラットフォームはどこにもなかった。そこで当時、動画関係のサービスはなかったが、18禁ジャンルがおおっぴらに存在して、エログロイラストも数多く投稿されていたイラストSNSであるpixivの社長さんにツイートを送ってみた事がある。



当時Ustreamに噛んでた孫正義氏に振れと流されたので、一応孫さんにもツイートしてみた
当然ながら返信はなかった。


それから7年が過ぎ、気がついたらpixivのお手軽お絵かきサービス、pixiv Sketchにライブ配信機能が追加されていた。7年前の僕のツイートが影響したなんてことはまあ絶対ないだろうけど、これが絵描きの配信用として、なかなかよく出来てるのだ。もちろん配信時に18禁の設定が可能なので、おっぱいをいくら描いてもOKだ。

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 まず右のチャット欄の上に「自動読み上げ」のスイッチがある。つまりチャット内容を音声で読み上げてくれる。作画作業の配信は、基本手元を見ているのでコメントが来た時に見逃したりするし、コメントが来るたびに「ピッ」とかの音が鳴る環境もあるがその場合も「読む」ために手元から目を離さなければいけない。作業を中断せずにチャットを受け取るためには、音声による自動読み上げが必須なのだ。ニコ生やFC2ライブでは、外部ツールで実現可能だが、そういった追加のソフトをインストールして設定するのは手間だ。

 左の方にある「字幕音声入力」をONにすると、マイクに向かって喋った言葉が自動的にテキストに変換されてチャット欄に入力される。これが本当にすごい。チャット内容を音声で聞けたとしても、それにキーボードで返信していたら結局作業中断なので締め切り前の漫画家のストレスは増大する。なのでマイク繋いで音声のみで返事をすることが多くなるが、これだとチャット履歴に返事が残らないので、あとから来た視聴者に同じ質問を繰り返されてストレスが溜まることもある。口で喋って、それがチャットに残る。本当にこれが欲しかった。音声認識制度もなかなかのもので、普通に喋っていればほぼ間違いなく認識してくれる。

 とまあ、まさに絵描きが作業配信する時に欲しかった機能がずばり入ってるpixiv Sketch ライブだが、残念ながら本格的な18禁エロ作品の作業配信には使えない。なぜか。
sketch.pixiv.help
 
 そう、モザイクをかけなければいけないような部分は、モザイクをかけた状態で配信しないといけないのだ。エロマンガの作業では、通常性器などを「描いてから隠す」のである。局部の修正作業は商業誌なら入稿後。同人誌なら一般に作画作業の最後で行うものであるので、作業過程を配信する際にあらかじめ隠しておいては作業にならない。ラフでもだめとなってるので、下書き作業中も隠さなければならず、この通りにするととても作業にならないのだ。そりゃあ日本の企業であるので、わいせつ図画頒布等の罪に問われないために必要な規定ではあるが。