Nekoの契約に来たIBMパシフィックのえらいさんは安楽亭の会計をアメリカン・エキスプレスで支払った

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 Nekoというデスクトップペットの歴史をまとめたサイト。これのMac版を作ったのが僕なのだけど。なんか懐かしくなってしまった。
上記サイトでも描かれているけど。もともとPC-9801シリーズで、テキストカーソルを追っかける猫を常駐ソフトとして作成した若田部直さんという方がいらっしゃったのね。これが当時日本でかなりヒットしてたんです。PC-98シリーズは、テキスト画面とグラフィック画面が独立していたので、エキストエディタやワープロを動かしているとき、グラフィック画面は空いてたのだけど、そこに猫のアニメーションを表示してなごませるプログラムでした。

 その頃僕は、Macintosh Plusを購入していたのだけど、Macはそもそもテキスト画面がなく、全てがビットマップで処理されていたので、PC-98とおなじアプローチはできなかったのですね。なので、小さなウィンドウの中で、マウスカーソルを追いかける猫を作ったわけです。ウィンドウなので、そこからカーソルが外れたら、猫は壁にぶち当たるので、そこで爪とぎをしたり、しばらくカーソルを動かさないでいたら、あくびをし、頭を後足でかいて、やがて寝てしまう。そしてマウスを動かせばビクっと起きるというアルゴリズムを組み込みました。これが結構海外含めてうけたのですね。WindowsUNIXX Window Systemにも移植されました。

 そんなある日、IBMのパシフィック担当副社長だかの肩書の方から連絡がきまして。OS/2にNekoの画像を使いたい、お話できないかということでした。打ち合わせ場所は僕の住所の近くで良いという話だったのですが、手頃な喫茶店などがなく、最終的にファミリー焼肉チェーンの「安楽亭」で打ち合わせることになりました。まあ、天下のIBMのおえらいさんを、安楽亭で接待した人間など僕くらいではないかと思います。IBMは当時マイクロソフトと組んで、PCの次世代OS、OS/2を開発していました。これ、マイクロソフトとの間でもめて、結局MSはWindowsを、IBMOS/2を開発するというふうに分かれてしまい、最終的にはOS/2は負けてしまうのですけどね。そのOS/2の2.1に、Nekoを添付したい。プログラムはこちらで組むからソースコードの提供はいらん、画像の著作権非独占的使用権だけくれという話で。そのころすでにX11などで勝手に移植されたものが存在することは僕も知っていて、別に僕に許可を取ってるわけでも、金を払ってるわけでもなかったけれど、それらが好評だというのは聞いていたので、IBMとの契約で、それらの勝手移植が排除されることは望みませんでした。なので、「これに契約して、すでに移植されている他のプログラムを訴えるというようなことはないのですよね」と確認し、「そんなことはありません、あくまで非独占的、つまり他者の使用を咎めるものではありません」と確約して頂いたので、契約書にサインしました。なお、この交渉過程でIBMパシフィックのえらいさんは、「許可していただけなければ、それはそれで構いません、IBMの側で子犬でもなんでも別のキャラで作れますから」と言ってたのですが、これって交渉術だと思うのですが、別にゴネるつもりもないのにそんなこと言われてもなあという気持ちになりました。まあ、肉が来てからは、お互いがアマチュア無線免許持ってるとかそういう話で盛り上がり、非独占使用権を30万円で円満に契約しましたが。店を出るときにIBMの人が、「会計はこちらで」と革財布からアメリカンエキスプレスカードをスチャっと出したのに驚きました。安楽亭でアメックス!!。なかなか見ない光景ではないだろうか。はあ~エグゼクティブの人は違うなあと思った経験でした。逆に、IBMのエグゼクティブを安楽亭で接待した僕もなんだかすげえよねwww