昔の日本ではVisa/Masterカードは殆どなくて、JCB一強、バブル時代は丸井とセゾンカードだった


 クレジットカード。現金が手元になくてもお気軽に買い物ができる便利なプラスチックのカード。あれ、店舗に販売額を一括で振り込み、購入者からあとで取り立てる金貸しなわけなのだけど、昔はそんなに便利に使えるものではなかった。そもそもクレカに対応している店舗が少なかったので、そうそう利用できるものではなかったのだ。月賦で家電品などを購入する際も、いちいち販売店と契約していたものである。クレジットカードによる後払いを使用するためには、つまり販売店がクレジット会社
と契約する必要がある、しかもクレジットカードでの買い物の際はお店がクレジット会社に手数料を支払わなければならない。現金ならば丸ごと収入になるのに、カードだと店に損失が出るわけで、なかなか普及しなかったのだ。

 日本でこの分野のパイオニアはおそらくJCB三和銀行日本信販によって作られたブランドだ。このクレジットカードは、1960年代から1970年代に、日本全国の百貨店やレストラン、ホテルなどと契約を結び、使える店を増やしていった。かつ、海外旅行ブームにあわせ、日本人観光客が訪れる海外の主要拠点に支店を設置、加盟店を増やし、日本唯一の国際カードの地位を築いていった。

 JCBに対抗する形で、1970年代には、大信販のDCカードなど、日本国内向けのクレジットカードブランドがぼつぼつ出ていた。1980年代からバブル景気の時代に差し掛かる頃、これら、銀行、信販系の会社ではない、クレカが急速に普及する。「丸井はみんな駅のそば」のCMを打ち、全国主要都市圏の駅前に店舗を構えた丸井百貨店が丸井だけで使える丸井カードを発行。西武の堤清二が立ち上げた西武セゾングループで使えるセゾンカードを発行。おそらく1980年代にはこれらの特定店舗でのみ使えるクレジットカードがかなり流行った。このころは、日本国内では丸井やセゾンを日常の買い物に使用し、海外旅行の際はJCBカードを取得するみたいな感じで日本人は行動していたと思う。

 だけど、その後、海外旅行ブームが過熱して、海外行くとJCBが使える店舗なんてほとんどないことに気づく。世界中で使えるクレジットカードって、アメリカのVisaと、ヨーロッパのMaster。この二つは海外でもほぼ同じように使える。1980年代後半から、日本のクレジットカード会社は、Visa/Masterとジョイントしていく流れになる。

 結果的に、1990年代後半からは、日本国内の銀行や信販会社、その他金融会社が発行するクレジットカードもほぼすべてVisaかMasterとジョイントし、決済はVisaかMasterのシステムを通過するようになる。日本独自の決済システムは、ほぼほぼ消えてしまった。

 そういえば、買い物の金額を直接銀行預金から引き落とすデビットカードというものも1980年代から登場していたと思うのだけど、これも日本では独自のJ-debitというものを構築していた。銀行のキャッシュカードを店で提示すれば買い物ができるというものなのだけど、J-Debitは国内銀行の営業時間に縛られていたため、夕方以降使えないというとんでもない仕様になっていた。1980年代には普及していたコンビニで夜の買い物に使えないカードってあまりにも意味がない。なので、1990年代にJ-debitに参加したコンビニチェーンも早々に撤退してしまった。近年はネットバンクや地方銀行がVisaデビットなどをやっていて、これクレカのシステムで使えるかたちで、クレカ決済できる店でなら追加契約なしで使えるので大変便利である。

 おまけの話。クレジットカードの番号は、昔からエンボス加工されていたのだが、あれ、今みたいにオンライン決済できなかった時代に、カーボン紙を挟んでガコンと転写するために盛り上がってるんだよね。昔はクレカでの決済って、カード挟んでローラーで請求書に印刷する端末をガコンと動かして、伝票にサインして商品受け取ってた。店舗側は、一か月分の請求書をクレカ会社に送ってその分を受け取る仕組みだった。アナログだよねえ。最近はセキュリティの観点で
番号を表示しないカードもあるらしく、いろいろ変わってきているのだなあ。