恵方巻きは呪詛。気持ち悪い。

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 なにかコンビニが定期売上イベントにしてしまった恵方巻。あれ気持ち悪くないか?

 恵方巻きは、太巻きを、その年の恵方に向かって、無言で食べきる行事とされている。関西の一部地方で生まれた風習らしいのだが。そもそも。その年の恵方というのがピンとこない。陰陽道で、その年の福徳を司る神が毎年変わる。その神の座す方角が恵方である。もう陰陽道という段階で呪術的だ。そして無言。言葉を発してはいけないというのは禁忌であり、破ればなんらかの祟りがありそうだ。「方角」と「言葉」が縛られている。あからさまに呪術っぽい。

 節分前にスーパーに行ったら床にコンパスが描かれていて、矢印のところに「今年の恵方」と書かれていた。いや親切だが、このスーパーで恵方巻きを買って、家に帰って、スーパーの床に書かれていた恵方を再現できるのだろうか。そう、恵方の判定は本来陰陽寮の博士とかが算出して民衆に示すようなものなのだ。呪術師が本格的に呪を為すための秘匿技術である。言葉を発してはいけないというのは、鬼や死霊に見つからないための知恵である。耳なし芳一の故事にもある。

 太巻きを一本まるごと無言で食べきる。しかも一方方向を向いてということは、途中で口を離して汁物を飲むのもNGである。汁を飲むために顔の角度が変わるかもしれない。結構苦行である。

 太巻きを食べる作法、角度や無言を破った場合にどうなるのかという説明はない。しかし、これだけ縛りをきつくした呪術なら、わずかに角度を間違ったり、ため息程度でも音を発したら、たちまち床下から黒い手が無数に生えてきて、失敗した人を冥府に引きずり込むような恐ろしさを感じる。

 この風習が、1990年代あたりから、コンビニ各社に取り入れられ、急速に全国に広まり、コンビニ本部からの事実上のノルマ押しつけでバイト諸君が自爆買いせざるを得なくなったわけだが。そんな犠牲を払ってこのような暗黒呪術にしか思えない風習を広めてよいのだろうか。とても気持ち悪いと思うのだ。単純に、たとえば5人家族全員が、茶の間で全員同じ方向を向いて、一切口を開かず一心に太巻きをもりもり食べきる絵面を想像するだけでもとても気持ち悪い。