怪傑?快傑?

怪傑という言葉がある。goo辞書によると
dictionary.goo.ne.jp
非常にすぐれた力を持つ不思議な人物。
となっている。
怪傑ゾロとか怪傑黒頭巾とか、怪傑ライオン丸とか、怪傑ゾロリとか。いろいろな作品タイトルになっている…ちょっと待て?

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ライオン丸は「怪傑」じゃなくて「快傑」じゃないか。不思議、あやしいを意味する「怪」じゃなくて、ここちいい、スカッとする方の「快」じゃないか。「傑」は「傑作」「傑物」の「傑」であり、文字通り優れたものを表す。つまり「快傑」なら胸がすくような優れた人物であって、不思議でも怪しくもないことになる。ではゾロは?黒頭巾は?

時系列で言うなら、黒頭巾の前にゾロがある。1919年に書かれた小説が、1920年に映画化され世界的大ヒット。このときの邦題は「奇傑ゾロ」怪傑でも快傑でもない。ただ、「奇」はあやしい意味を含むので、「怪傑」に近いかも知れない。だが、1935年に「快傑黒頭巾」が書かれ、1937年以降、ゾロの何度かの映画化の際、邦題が「快傑ゾロ」になっている。つまり、ある種のヒーローにつける冠としての「かいけつ」は「快傑」が最初であり、それは「快傑黒頭巾」が元祖であったといってもいいのではないかと思う。
怪傑ゾロ - Wikipedia

これがその後、1972年の「快傑ライオン丸」まで定着し続けたと思われる。では怪しい方の「怪傑」はどこから産まれたのだろう。

金太の大冒険」で有名なコミックソング歌手、つボイノリオが1976年に「怪傑黒頭巾」という曲を発表している。これはシモネタソングであって、タイトル自体が一種のパロディと言えるので、ここであえて「快傑」を「怪傑」に置き換えたのではないか。するとシモネタでもパロディでもない作品でヒーローに「怪傑」とつけるのは単に間違いではないだろうか。というか、「怪傑」はそもそもパロディ用語であってつボイノリオの一発ギャグでしかないという可能性が浮かぶ。


ちなみに、ゾロリはゾロのパロディだが、表記は「かいけつ」であって、実は漢字表記されていない。彼はもともとは「ほうれんそうマン」というシリーズの適役であったが、のちにスピンオフとして主役になった。

結論として、「怪傑」はつボイノリオの曲名にのみ存在し、一般的には使われない単語である。goo辞書の記述は間違いもしくは敷衍した誤解ではないかと思われる。