うなぎ絶滅危機についての雑感

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告白すると僕は去年5年ぶりくらいにうな重を食べた。この位の頻度は許して欲しい。それはさておき、うなぎがほんとにやばい。今年のシラスウナギの不漁はもしかしたら海流の変化によるものかもしれないけど、ここ何年もやばいと言われ続けているのであって、現実的に最低限一定期間(数年単位で)禁漁するなどの緊急対策が必要だと思う。一体なぜこんなことになってしまったのだろう。

スーパーで気軽に買えるようになったというが、これは昭和の時代から土用の丑の日などにセールを行う習慣はあった。だがある時期から年中売られるようになり、価格も下がっていった。1990年代に、コンビニ弁当にうな重が登場するのだが、初期の頃は「コンビニで豪華な弁当は無理」という当時のコンビニエンスな常識もあり、5cm四方くらいのうなぎの切れ端が乗った弁当が売られたりしていた。ここで無駄な企業努力が牙をむく。コンビニのうなぎ弁当もどんどん豪華になり、かつ価格は抑えられる。スーパーも輸入うなぎを中心に安価な蒲焼きを売るようになる。デフレ時代特有の価格圧力がガンガン原価を下げ、大量に消費されるようになっていく、2000年代に入った頃だったか、セブンイレブンが「土用の丑の日は夏だけではありません」と真冬にうな重を売り出したことがあった。もう完全にうなぎ需要をむりやり掘り起こして売りまくる作戦である。

需要の掘り起こしと低価格化。これがうなぎを絶滅に追い込んでいる。夏の土用の丑の日の、年に一度の贅沢。もしくはもともと高価なうなぎ専門店での外食だけなら、そんなにひどいことにはならなかったろう。

2,3年前のTVで、うなぎを買い付ける商社がヨーロッパ、東南アジア、アフリカまでうなぎを買い付けに行き、シラスウナギからの養殖事業を立ち上げるさまが描かれていた。もはや日本だけではないのだ。

シラスウナギの養殖は、天然の成魚だけ獲るよりはましだが、やはり根こそぎの資源収奪である。ほんとうの意味での養殖、卵から育てて産卵させるサイクルを作る試みもかつてあって、恐ろしいほどの失敗を繰り返してなんとかがんばっていたはずだが、その後実用段階に達したという話は聞かない。まだだめなんだろう。いずれ成功するかもしれないが、天然より高いがサイクルが確立した近大マグロの段階にも至っていないと思われる。そしてこのままでは、本当の養殖サイクルができる前に絶滅しそうである。5年後、10年後、30年後にうな重を食べられるように、今我慢すべきだと思う。