iOSのQRコード対応など

 iOS11の新機能として、標準のカメラアプリでQRコードのスキャンが可能になったというものがある。QRコードは、もともとデンソーが1994年に開発した二次元バーコードだ。2000年頃には、日本において非常に普及し、iPhoneが登場した2007年頃には、カメラ機能を持つ日本の携帯電話は軒並み対応していた。しかし、これは日本以外ではあまり普及しておらず、当然iPhoneにも搭載されなかった。サードパーティ製のアプリをダウンロードしなければいけなかった。

 iPhone登場の時代のいわゆる日本のガラケーは、そうとう世界の先端を行っていた。QRコード、お財布ケータイ、ワンセグチューナーといった機能は、登場当時のiPhoneには全く搭載されておらず、これらを使いたいユーザーからしたら、iPhoneはいくつかの当たり前と思われた機能が退化し、失われた携帯電話になってしまった。

 しかし、圧倒的な使いやすさでiPhoneにはじまる全面タッチパネルスマホがたちまち主流になっていく。同様のタッチパネル型スマホであるAndroidの方は端末メーカーがハード、ソフトともに手をいれることが可能なので、日本メーカーはAndroidベースで、ガラケーで搭載していた各種機能を追加したりしていたが、どういうわけか日本ではiPhoneのシェアが60~70%と大きな割合を占め、日本の携帯メーカーは苦しい戦いを余儀なくされることになる。

 Appleは言うまでもなくアメリカの会社だ。そして日本ローカルな規格には非常に冷淡である。おサイフケータイとほぼ同様の使い勝手のApplePayを導入したとき、最初日本で主流のFelicaを無視して、欧米のTypeA/Bという短距離通信決済技術を採用した。(その後iPhone7でFelica使用のSUICAに対応)。あの時も日本では「いまさらだよなあ」という声があったはずだ。

 今回QRコードに対応したのは、おそらく中国でのQRコード決済の流行に乗っかったものだろう。QRコードは20世紀に登場して、あれだけ日本で使われても、中国が利用を始めるまで、Appleにとっては全く目に入らない路傍の石だったのだ。まあ欧米全体に匹敵する中国市場だもん。無視できないよなあ。

 モバイル回線が今と比べ物にならないほど遅かった時代にインターネットとのゲートウェイを作ったNTTドコモiモードも、海外進出に失敗して日本独自規格に収まっていた。上で上げたものもみんなそう。どれだけ優れた技術も、世界で受け入れられなければグローバル社会で受け入れられず、あとから車輪の再発明や、中国のような別市場の盛り上がりでの再評価しかされない。使えないよりは使えたほうがいいけれと、今回の「いまさらの」QRコード採用は、日本の技術の敗北に等しいと思う。