アニメ「正解するカド」の、CGと手描きと歴史

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 「正解するカド」では、主要キャラクターは3DCGだが、登場頻度の低いキャラは手描き作画である。これ、頑張ってコスト計算してるんだろうなあ。人物の3Dモデルを制作するのはそれなりに手間と時間がかかるが、できてしまえばモデルの配置とモーション付けは手描きより早くできてコストを抑えられるだろう。これは同じモデルを使用する時間が長いほど安くなるはずだ。それに対し手描きの場合登場するたびにすべての動きを描かなければいけないので、コストがかかる。だたし、モデリングにかかる費用と時間を考えると、登場頻度の低い人物に関しては手描きのほうが安上がりになるだろう。

 

 1990年代末あたりから、アニメにCGが使用され始めたが、当初は宇宙船のような、ディティールが多く、基本的に変形せず、方向転換や移動というシンプルで描くのは大変だけどCGなら如実に楽で効果的になる部分に限られていた。人間のモーション付けみたいな作業がそれなりにこなれてきたあとも、しばらくは手描きでは大変な、巨大ロボットなどを中心に使われていた。2007年の「デュエル・マスターズ ゼロ」などで、人物もCGになったが、トゥーンレンダリングがまだ不気味で、顎を上げたシーンなどで違和感が強かった。このへんは幼児向けのシンプルなキャラクターであることもCG化に向いていたのだろう。

 2000年代には、劇場作品などでフルCG作品がいくつも登場するが、この頃はおそらくTVに比べて予算をかけられる劇場映画だからこそフルCGができたのだろう。まだCGはカネがかかったわけだ。

 

 2010年代に入ると、TVでフルCG作品がそれなりに多くなってくる。「シドニアの騎士」あたりになると、CGキャラの不気味さもだいぶ緩和されてくる。ポリゴン・ピクチュアズや、サンジゲンといった、2Dアニメの中のCGパートを制作していた会社が作品元請けとなって制作されるので、その過程でためたノウハウが活かされているのだろう。

 

 「正解するカド」は東映アニメーション初のフルCGによるTVシリーズと言われている。最初に書いたように一部のキャラクターは手描きなので、完全なフルCGではないが、ほとんどCGではある。手描きアニメの老舗である東映アニメーションが、ここでCGアニメに本格的に取り組み始めたわけで、将来日本製アニメの中心がCGになる分岐点となるのかもしれない。東映アニメーションよ、どうか正解されたし。