センサーシフトをしゃぶりつくすPENTAXは面白すぎる

 カメラの手ブレ防止機能には、大きく分けてレンズを動かす方式と、イメージセンサーを動かす方式があります。後者の利点はボディ内で手ぶれ補正できるので、レンズの方に複雑な補正機構を入れなくても良いこと。レンズ交換式カメラなら、古い時代のレンズでもある程度補正が効いてしまいます。

 

 PENTAXの一眼レフ等で使用されてるのはもちろんセンサーシフト方式。手ブレを検知してそれにあわせてセンサーを動かすことでブレを相殺します。で、まあそのためにセンサーを縦横に動かす機構を組み込んだわけですけど、「あれ?これ手ぶれ補正以外にも使えるんじゃね?」とばかりに、イメージセンサー表面に付着したホコリを、センサーの高速振動で叩き落とすというおまけ機能をつけます。ここからPENTAXの暴走が始まりました。

 

アストロトレーサー|GPS UNIT O-GPS1 | RICOH IMAGING

 星空を撮影する際、長時間露光しつつ星を追いかけるのは、専用機材を必要とする高度な撮影技術でした。これをGPSユニットを利用して、カメラのイメージセンサが勝手に星を追いかけることで実現するという、ちょっと頭のおかしい発想に至ります。なんだこれはw。

 

 さて、デジカメにおいて、イメージセンサーの前段にローパスフィルタを置くのは常識でした。イメージセンサーの画素は縦横格子状に並んでおり、かつ殆どの場合ベイヤー配列といって、赤、青、緑といった単色のセンサーの並びからできています。これを合成して本当のカラー画像を作成するのですが、もし赤の1画素だけに当たるような細い光があったとすると、周辺の青、緑画素に光が当たらないため、赤成分だけが残ってしまいます。これを混ぜ合わせても正しい色になりません。なのでローパスフィルターで光を少しだけ拡散して、細い光でも周辺の画素にも当たるようにします。要するにせっかくピントが合った画像を少しだけぼかしているわけです。カメラというのはできるだけ解像度の高い映像を作りたいものですから、近年このローパスフィルタをなくして、そのかわり画像処理で工夫して間違った色や、モアレの発生を抑えるような工夫がなされつつあります。しかしソフトウェアによる後処理ではほんとにその画素の色が間違っているのか正確には判断できません。

 できるならば、より高解像度で撮りたいときはローパスフィルタを外し、それほど解像度にこだわらないけど安全に撮りたいときはローパスフィルタを使用する、という使い分けが出来たほうが便利です。しかし、機械的にフィルタを着脱するのは構造上難しい。そこでPENTAXはセンサーシフトを利用することにします。それがローパスセレクターです。

 

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 ローパスフィルターをなくして、そのかわりイメージセンサを「露光中に」上下左右に1画素分動かして特定の位置の光が必ず周辺画素にも当たるようにしたわけです。もちろんこの機能をOFFにもできます。すげえ。

 

 さて、上に書いたようにデジカメのイメージセンサーは通常は基本三原色それぞれを記録する画素が格子状に並んだ構造をしており、周辺の画素が得た原色情報を混ぜ合わせて色を作っています。従ってたとえば1000万画素のカメラというのが作る画像は実際は300万ピクセルのフルカラー画像を引き伸ばしたようなもので、「画素数」から想像される解像度は得られません。そこでPENTAXはまたまたセンサーシフトを使ったとんでもない工夫をやらかします。リアルレゾリューションシステムの登場です。

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上のローパスセレクターと似た方法ですが、今度は一度のシャッターで、センサーを1画素分上下左右にずらしながら4回連続撮影して、4枚の画像を合成するという方法です。これによって特定位置の画素に赤、青、緑三色の情報が集まり、1000万画素が本当の1000万ピクセル画像になります。もちろんこの撮影中、わずかでもカメラ、被写体とも動いてはいけません。なので三脚にがっちり固定して、静物を撮影する状況でしか実際使い物にならないと思います。無茶しやがって

 

なお、当然ですがローパスセレクタや、リアルレゾリューションを使った撮影の際、センサーシフトはこの特殊撮影のために使用されるので、手ぶれ補正は効かなくなります。本末転倒感がすごいです。

 

こういうことをするPENTAX、僕は大好きです。ニコンキヤノンにくらべてどうしてもマイナーなこともあり、最新高級機以外は投げ売りになることも多く、意外と買いやすかったりするし(笑)。