「太陽の王子 ホルスの大冒険」は未完成だった


太陽の王子 ホルスの大冒険(予告編) - YouTube

 

「太陽の王子 ホルスの大冒険」は東映動画の1968年公開作品。伝説になってる名作なのだ。1980年代のアニメブームでアニメ雑誌がいくつも創刊され、よくこの作品が紹介されていた。高畑勲が監督、大塚康生作画監督、宮﨑駿が場面設定、美術設定という豪華スタッフによる大作で、総作画枚数15万枚。「風の谷のナウシカ」が5万枚で、「もののけ姫」が14万枚だったことを考えるとすさまじい代物なんである。

 

80年代のアニメブームではこれは過去の名作とされていて、実際には見たことのない人も多かった。僕も見た覚えがなかったので、評判だけ聞いてて「どんなすごい作品なんだろう」と胸を躍らせていた。当時レンタルビデオブームのはしりでもあり、過去のアニメ作品がビデオで発売されていた。ホルスも発売されたので、レンタルで見たのだけど。

 

実際すばらしい作品で、作画、シナリオともに面白く見ることができたのだけど、途中何箇所かすごく気になるシーンがあった。ネズミや狼が村を襲撃するシーン、動画が全くなく、静止画をスライドさせてるシーンがある。また、村長の小屋を破壊して木材調達するシーンでは中割りしない原画を撮影して仕上げてるようにしか見えないカクカクの動きになっている。このストップモーションなシーンに村長の「わしの小屋だー、きゅう」みたいに滑らかに声が当てられているため、一層みずぼらしいのだ。その他のシーンが恐ろしく注意深く丁寧に作られているだけに目立つのだ。しかし当時のアニメ雑誌などでその点に言及したものを見た覚えはなく、皆が絶賛してるので「あれはなんだか僕にはわからないが、あれでいいのかな?僕がアニメをわかっていないのかな?」と思っていた。

 

のちに大塚康生の書籍などで、これらのシーンが実際間に合わなくて未完成のままだったということを知った。当時東映労働争議もあり、ホルスがどんどん予定を超えて予算を食っていたこともあり、制作中断やら無理矢理の公開決定やらがあり、結局あの状態で完成とせざるを得なかったらしい。

 

なので、あの未完成シーンをあらためて描き直して完全版ホルスを作って欲しいと思い続けているのだが、難しいのだろうなあ。

 

あと、おそらく作画時点の問題では無いと思うのだが、ヒルダが吹雪の中で倒れたフレッツとコロに命の珠を与えて逃がすシーン。フィルムが数コマ欠けてる。最初のビデオ化の時にはブラックアウトしてたし、DVD化の時には静止画にしていた。ここもちゃんと直してほしい。東映さん、なんとかなりませんか?