スタートレック映画で、日本ではスタートレックであることを隠して宣伝していたものがある。

www.youtube.com
スタートレック・ファーストコンタクト
 この映画、公開当時執拗に「スタートレック」の名前を言わなかった。ハリウッドの新作SF映画「ファーストコンタクト」として扱われていた。CMにはエンタープライズ号が写ってるので、知ってる人はわかるのだが、なぜ「スタートレック」を隠すのか、当時すごく不思議に思ったものだ。

 「スタートレック」は言わずと知れた超有名SFシリーズだ。日本でも「宇宙大作戦」としてTV放映され、それなりに知名度もあった。その後スターウォーズによってSF映画ブームが起き、1982年、「スタートレックII カーンの逆襲」、1984年、「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ」が公開される。これは当時のILM渾身のCGで作られたジェネシスシーケンスなどが特撮マニアに話題になった。だけどこの時すでに、スタートレックを多くの日本人は忘却していた。マニアの支持はあったものの、洋画として配給する側の期待を上回る収益は出なかったのではないだろうか。
www.youtube.comwww.youtube.com

カーンの逆襲の段階で、TVのスタートレックシリーズの設定を知っていることが前提の映画だったので、知識のない初見の客にうけなかったとみなされた可能性が高い。その後1996年に新TVシリーズの設定で「ファーストコンタクト」が制作された時、過去の失敗から、「スタートレック」というシリーズ名を隠し、過去のしがらみのない、独立新作として売ろうとしたのだろう。しかしこれは悪手である。「余計な知識はいりませんよ」と言われて見に行ってみればそれはカーンの頃よりさらに歴史を積み重ねたスタートレック世界であり、前提なしではやはり完全に楽しめなかったろう。ボーグもバルカン人も知らずにあの作品をどれだけ楽しめるだろうか。

 これは、客を騙して劇場に入れてしまえば金は取れるという、一時しのぎの商売だと思う。これで裏切られた客は次はこなくなる。こういうの、この後もちょくちょく見かける。2013年に公開されたゾンビ映画ワールド・ウォーZ」を、ゾンビ映画であることを隠して、戦う父親の家族への愛で押し通したCMを流していた。TVCMではゾンビのゾの字もなかった。「Z」はあったけどな。

 肝心なことを隠して金をだまし取るのは詐欺だと思います。