ローザ・ルクセンブルク

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/52/Rosa_Luxemburg.jpg

 ローザ・ルクセンブルクという革命家を知ってるだろうか。レーニンとだいたい同じ時期に活動していた共産主義革命家だ。レーニンと同じくマルクス主義を奉じていたが、ロシア革命ソ連の成立には徹底的に批判をしていた。

 現代、いや20世紀初頭から、共産主義マルクス・レーニン主義と同一化され、共産主義とは、企業の国有化、前衛党理論、民主集中制があたりまえとなって、だからこそ資本主義、自由主義の敵になっていった。ソ連崩壊後に左派が「あれはスターリン専制がわるかったのだ、レーニンまではよかった」あるいは、「マルクスは正しかったがレーニンが歪めだ」みたいな抗弁をして笑われたりもしたのだが、現実問題として、20世紀に成立した共産主義国はすべてレーニンの子孫だったのだから、マルクスが正しかったかどうかなど確認しようがない。

 社会主義共産主義は、そもそも18世紀の啓蒙主義からのフランス革命を経て、より民衆の利益を図る思想として様々な人によって唱えられた。その中でマルクスがもっとも論理的なシステムを構築し、最初のインターナショナルを築くことになる。ジャコバン派やブランキスト、無政府主義、さまざまな派閥があって、共産主義は分裂しまくった。普仏戦争末期に、パリに出現したパリ・コミューン政府はおそらくもっともはやい共産主義政府であろう。これは結社、言論の自由をうたい、普通選挙を実現していたが、プロイセンとフランス保守政府の弾圧で潰えた。マルクスはこのパリコミューンを目の当たりにし共産主義の正義を構築した。

 ローザ・ルクセンブルクは、ポーランド出身の女性で、偽装結婚プロイセンの国籍を得た革命家である。第一次大戦前後のドイツで活動していた。彼女は、第一次大戦前夜、戦争回避のためのゼネストを呼びかけていた。労働者が各国で一斉にストライキを起こせば戦争自体が不可能になると考えたのだ。しかし各国は結局ナショナリズムに走り、労働者の組合組織も戦争に協力した。

 レーニンは「前衛党」という概念を提出し、共産主義革命のためには、前衛党が専制的に民衆を導かねばならないとした。ローザはこの前衛党論に反対した。彼女はロシア革命後の、憲法制定議会がボルシェビキによって解散させられたことを批判し、資本主義の「搾取者」にも選挙権を与えるべきと主張した。なんだろう。驚くほどの自由主義、民主主義ではないか。ローザ・ルクセンブルクマルクス主義がもし勝っていたなら、共産主義とは理想的な民主主義になりえたのではないだろうか。

 現実には、レーニンがすべての共産国の規範になり、前衛党によって思想・表現の自由は弾圧されていった。ローザはドイツ革命に失敗し、銃床で撲殺され、ナチスによって墓を暴かれるハメになる。