インスタントラーメンの油

 日テレの「得する人損する人」という番組を見ていたら、インスタントラーメンをいかに美味しく、インスタントじゃないように作るかの勝負をやってて、「そんなに手間や追加食材、調味料増やしたらインスタントラーメン使う意味がねえんじゃねえか?」と思ったのだけど、それはさておき、麺の茹で汁を一旦切れば、麺の油が抜けてヘルシーになるというテクニックを使っていた。確かにカロリーを抑えるという意味ではそうなんだろうけど、ラーメンってもともと油の浮いた食いもんで、油も「ラーメン」の大切な要素じゃねえのかと思ったりした。

 

 インスタントラーメンは麺を油であげるのが基本である。油であげることで、高温で蒸発した水分が麺に微細な穴を開け、これが短時間でお湯が染み込み、3分で茹で上がるという特徴を生み出す。茹でたラーメンに粉末スープを加えればそれだけでいちおう「ラーメン」と呼べるものが出来上がる。つまり麺に染み込んだ揚げ油がスープに戻って「ラーメンの油」の代用をしていたのがインスタントラーメンである。

 さて、1970年代から1980年代にかけて、インスタントラーメンは「ノンフライ」という、揚げない麺を使用するものが流行し、いまも高級品はこの方法の延長で作られている。麺を油で揚げず、熱風などで乾燥させると、微細な穴があかないので茹で時間は長くなる。なのでノンフライ麺は4分とかかかるものも多い。まあこのへんは製造上の工夫で調整も効くようで、ノンフライだからといって必ずしも長くかかるとも限らないが、ノンフライのラーメンの場合、粉末スープに加え、「調味油」という油が付属するものが多い。つまり麺から油が出ないから油を別添しないといけなくなったのだ。油は簡単に粉末にできないので、粉末スープに混ぜて、一つの袋にすることができない。

 

 ノンフライ麺が普及する前に日清の「出前一丁」が「ごまラー油」をつけているが、これは文字通り追加の風味付けで、なくても普通にインスタントラーメンの味にはなる。

 

 なお、四角いインスタントラーメンと別の文化として、1960年前後という早い時期から九州では棒状ラーメンが各社から発売され、これらは一般にノンフライのようである。東日本からあんまし出たことのない僕はこれらが昔どうだったのかよく知らないのだが、少なくとも初期のデザインを引き継いでいると思われるマルタイ醤油ラーメンは、やはり粉末スープの他に油を別添している。