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ダーウィン進化論と日本独自の進化論

 ダーウィン(とウォレス)の進化論は、遺伝子の発見以前のものなのだが、そのアイデアは驚くほど有効だ。それは非常にシンプルな考え方に基づく。

 

  • 生物は自分より多くの子を作る。
  • 子は親に似ているが僅かな変化がある。
  • 生存環境において親より優れた個体は生き残りやすい。

 

 捕食関係や、栄養資源の争奪が起こっている状況では、たったこれだけの条件で自動的に進化が進むことになる。大体の場合生物の数はバランスが取れている。つまり親よりいかに多い子が生まれても、捕食者に襲われたり、餌を得られず死んでしまう。その結果、より生き残りに向いた個体が生き残って次の世代を生むことになる。この過程が自然選択と呼ばれる。なお、世代ごとの変化は基本的にごく小さいものになる。分子レベルの化学反応によって起こる変化は、それほど大きなものにはならない。Xメンみたいに突然目からビームを放てるようになることはない。夢がない話だが、大きく変異した場合は生物としての機能不全の方にいってしまう。生物進化の歴史で、複数の種が成立している段階ですでにその時代の環境に適応するような体になっちゃってるので、大きく変化した場合、生き残りが難しくなってしまう。

 

 結論として、生物の進化というのはゆっくり進展するものだ。キリンの首が急速に伸びたと行っても、それは地質学的な尺度での話であって、1世代や2世代で急にオカピからキリンになったわけではないのだ。

 

 というわけで、ダーウィンの進化論と、その後いろいろあって現代主流となってる総合説はあまり変わっていない。だが、ときどき反ダーウィンな進化説を考える人達がいる。なかには別にダーウィン的な進化論に反対したわけではない人もいるけど、日本でそういう扱いになった人たちを挙げてみたい。

 

今西錦司

京都大学の名誉教授であり、霊長類学の権威であった。彼はダーウィン進化論が殺伐とした弱肉強食であるとみなし、より日本道徳的な「住み分け論」を提唱した。生物は環境に応じて平和的に住み分ける。進化すべきときになれば一斉に進化するとした。しかしこれはダーウィニズムを実は否定していないし、「進化すべき」状況の説明も「一斉進化」のメカニズムも提出しなかったので、進化論の歴史において現在ほぼなんの影響もない。彼のせいで日本の進化学研究が遅れた、いやそんな影響はなかったという論争がなされているくらいで、どっちにしても彼の進化説にはなんら見るべきものはない。

 

◯木村資生

「分子進化の中立説」を提唱した。分子レベルでの進化。塩基の入れ替えの殆どは自然選択に対して中立で、有利でも不利でもないということを見出した。実は木村の中立説はダーウィニズムを否定してなかった。はっきり表現型に影響を及ぼし、生き残りに影響する変化は当然自然選択にかかる。だが「有利でも不利でもない変化」が遺伝子に定着しうることを示したため、進化は自然選択が全てとみなす方面から攻撃された。

 遺伝子変異のほとんどが中立で、それは確率的事象なので、進化速度を計算できると言うすごい貢献をしていたのだが、一時期反ダーウイニズムの騎手みたいにみなされてた。

 

◯中原英臣

「ウィルス進化論」を提唱した。ウィルスが遺伝子を種を超えて水平伝搬するという事実から、進化の本質がこれであると思っちゃった人である。この人にかかれば、キリンの首が伸びたのは、首を伸ばすウィルスに一斉に感染したからとなる。つまり進化は感染症だと言っているに等しい。考えてほしい。あるオカピの群れが突然ウィルス感染で首の長い子ばかり生まれて、それがキリンになったとして1世代で適応できるだろうか。なお、彼はこのウィルス進化論が今西錦司の「進化すべきときになれば一斉に進化する」という説に理論的説明を与えたと自認していた。

 

池田清彦

構造主義生物学」というなんか哲学っぽい進化論を唱えた。正直何を言ってるのかさっぱりわからない。だれかわかる??