SHIROBAKO 23話での漫画原作サイドの描かれ方

予め断っておくと、僕は一応漫画家ではあるが、メジャーな雑誌で連載持った事もないし、作品がアニメ化もされたことも無い。その上で思ったこと。

 

アニメ制作会社の日常を描いたアニメ「SHIROBAKO」すごく面白い。それはもちろん丁寧な脚本や、魅力的なキャラクター、緻密な演出、作画などが生み出しているものなのだが、あまりよく知らないアニメ制作の現場のあれこれをうまく紹介してくれて、あまりよく知らないにもかかわらずリアリティが感じられるという点もあると思う。ただ、なんだか漫画原作者サイド(というより窓口の担当編集)がひどすぎて、ちょっと困惑させられた。ただ、まああれは「制作現場に嵐を起こす、ストーリー展開上の役割」を割り当てられたためであろうと納得している。

 

作中、武蔵野アニメーションがアニメ化権を勝ち取った「第三飛行少女隊」は、より大手の人気スタジオも複数アニメ化権を欲していた人気漫画である。なのでスタッフ一同原作を読み込み、漫画の登場人物の気持ちを一生懸命考え、良い作品に仕上げようと頑張っている。ところが途中途中で原作サイドからの遅すぎる指示が出てスケジュールが危機的状況になる。

 

作画に入ってからキャラ設定にNGが出る。しかも何がダメなのか言ってくれない。ある程度進んでいた作業が全面ストップになる。

急にイベント用のPV制作を指示され、放送用話数の制作がストップする。

最終話アフレコ後に最終話絵コンテ全ボツ。納品まで5週間。

たまらず出版社に交渉に行くが、「作者はゴッドだ。ゴッドのいうことは絶対だ」と担当編集のみならず編集長も一切原作者との直接の打ち合わせをさせない。

 

担当編集の茶沢氏は、「変な話~」が口癖のチャラい男で、スタジオからの問い合わせには常に「あー、それで進めちゃってください、変な話~」みたいな返事しかしない。会議には欠席か遅刻、来てもすぐ帰り実質参加しない。そして手遅れに近い所で「先生が激おこ」みたいな連絡をよこす。もうまともに連絡役を果たしていないことがあきらかなのだ。

 

「第三飛行少女隊」(略して三女)最終話の絵コンテが全ボツということになって、これから丸々書き直すとなるとまず間に合わない。どうしても原作者と直接話し合いたい木下監督は、原作者のメールアドレスを見つけて直接メールを送ってみる。すると意外にもすぐに返事が来て、出版社最上階の会議室での話し合いをセッティングされる。

そして夜鷹書房に向かう監督だが。最上階会議室に行くまでに、担当編集、編集長、さらには編集局長が次々と現れて行かせまいと攻撃してくる。この部分はギャグを多用した完全なファンタジーになっているのだが。こんな出版社怖すぎだろう。

 

結局監督と原作者の話し合いはうまくいき、その過程で担当茶沢氏が主にめんどくさがってスタジオからの話を全部止めていたことが明らかになり、その場で担当を降ろされるという展開になるのだが、そこでなんか偉そうに悪いやつを切ったような顔してる編集長、こいつもちょっと前に「ゴッドがNOといった以上、これはNOなんです」と凄んでたんだぜ。アニメ最終回が作画崩壊したり、総集編になったら出版社的にもまずいだろうに。

スタジオ側がプロットも設定も全部原作チェックに回して、担当編集のOKもらってたという話をしても、「僕的にはOKって意味です。原作者がOKとは言ってません」って担当が屁理屈言ってるのを聞いていながら、作者OKを取らずに担当がOK出していた事、そのためにアニメ制作がピンチに陥っている事に何の疑問も抱いておらず、原作者との直接打ち合わせをセッティングしようとしないんだぜ。おかしすぎるだろこれ。

 

ところで、「三女」最終話絵コンテが全ボツになりかけた理由は、原作連載が鬱展開になっているところで、原作通りやると鬱エンドになってしまうため、アニメ側で希望を見出すよう変更したためで、原作者もこの後どう鬱展開を脱するか(あるいは脱しないか)決めかねているという状態なのだ。木下監督との話し合いでなんかもう、すごく話が噛み合って鬱展開を脱してアニメ最終回を決めることが可能になるのだが、これはアニメだけのための新展開とは思えない。この話し合いで見出した今後の方向はおそらく原作にも活かされると思われる。とするとこれは原作にも影響をあたえることになるわけで、見てて思ったのは「あーこの話し合い、本当は編集の仕事じゃね?」ということだった。これ自体が担当茶沢氏が担当としての職務を全く果たしていなかった事の表現なのかもと思ったけど、ここまで出版社サイドがカリカチュアライズされたファンタジー設定だと、そこまでは考えていないのかなとも思わされる。

 

世間的にはずかちゃんがとうとうデビューでみんな感動の23話だけど、それには触れないでこの記事を終わる。