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セカンドライフとその他のメタバースの違い

なんといっても自由度の高さがセカンドライフの特徴だったりする。運営会社のリンデンラボは実はシステムと土地を提供しているだけ、まれにイベントなども打つが、ほぼほったらかしである。しかしインワールドには無数の建物が並び、商業取引も盛んである。それらはほとんど例外なくユーザーによって作られたものだ。
セカンドライフのビューアには基本的な3Dモデリング機能がある。これは立方体や球体などのプリミティブを、拡大縮小したり切れ目を入れたり組み合わせたりという、モデラーとしてはきわめてシンプルなものなのだが。その操作性はなかなかいい。カメラ操作は通常のアバター操作の一環としてスムーズに行えるし、余計な機能がない分気楽で楽しい経験なのだ。
簡単な家くらいなら内蔵モデラーで十分作れてしまう。
ちなみに外部のモデラーで作成した複雑な形状を読み込むことも可能だが、結構敷居が高いので初心者には難しい。

さらに、作り出した3Dオブジェクトには、簡単にプログラムを組み込む事が出来る。移動、回転、音を出す、変形させるなど、できることは多い。チャットを喋らせたり、IMを送ったり、外部サイトのHTMLをリクエストするなんてことも可能だ。その方法はオブジェクトを「編集」モードにして、タブから「コンテンツ」を選び、新規スクリプトを作成すればいい。LSLというイベントドリブンのスクリプト言語が用意されていて、非常に使いやすい。

「コンテンツ」という項目があるという事は、つまりオブジェクトにはオブジェクトを入れられるという事だ。衣装や面白アイテム、車、テキスト、スクリプト、なんでもオブジェクトに入れられる。オブジェクトを入れたオブジェクトを入れたオブジェクトなんてのも作れる。LSLでコンテンツの中身を外に出したり、タッチした人に渡したりということも出来る。異常に柔軟性の高い仕組みだ。

オブジェクトのプロパティには「販売」のチェックボックスがある。これにチェックして値段を設定すれば、ただちにそのオブジェクトは売り物になる。そのオブジェクト自体を売ってしまうか、コピーを売るか、中身を売るかといった設定も出来る。

さらに面白いのは、クリエイター保護の仕組みだ。
アイテム作成者は、次のオーナーの権限を設定できる。その内容はコピー可、変更可、転送可の三つだ。
コピー可に設定されたアイテムを買った人は、自分の持ち物のなかでいくらでもそのアイテムをコピーできる。木を一本買ったら、家の周りに複製していくつも置けるわけだ。
変更可のアイテムを買った人は、自分でそのアイテムを改造できる。衣装のたけが合わないとか、ライトが明るすぎるとか、そういう部分を自分の好みに変えられる。
転送可のアイテムを買った人は、それを他人に譲渡できる。

コピー可かつ転送可であれば、譲渡してもオリジナルは残るが、コピー不可で転送可なら、ほんとに他人にあげてしまって手元には残らない。

この三つの権限を設定できる仕組みは実に優れたものだ。これによって、SL内での商売が可能になるといってもいい。

このように、土地だけ提供して物づくりのしくみを組み込んだセカンドライフでは、建物の中と外には実は何の違いもない。てくてく外を歩いてドアを開け、そのまま中に入るという形になる。ほかのメタバースでは多くの場合、町の外観と建物内は別空間になっている。建物の前に立ってドアをタッチすると、室内データをロードして、画面が切り替わり、建物の中に入るというパターンである。もちろんそのほうがレンダリングは軽くなるはずで、SLがあのグラフィックで重いといわれる理由の一つではあると思うのだが、建物の外と中でいちいちモードが変わるのと、そのまま中に入れるのと、僕にとっては楽しいのはセカンドライフのほうだ。こっちのほうがより仮想空間に入っている気持ちになれる。

ところで、多くのユーザーにとっては物づくりも商売も興味のないものだと思う、その場合SLとはチャットであると要約される。見ず知らずの人と出会ってコミュニケーションを楽しむ場だ。そうして仲間が出来、世界観が広がっていく。そのためにこれほどの3D世界が必要なのかという疑問は当然湧くだろう。実は3Dチャットに絞ったメタバースも各種存在する。アバターが部屋や自宅を持ち、そこに人が訪れ、コミュニケーションを楽しむ。町はなく、建物ごとに空間が独立した仕組み。これはSLのような世界を作らず、コミュニケーションに絞って成立させたものだ。しかし、それらはなにか壁を感じる。SLの場合、最低単位は256m×256mの「リージョン」で、多数のリージョンが結合した大陸もある。この、世界が広がっている感覚が必要なんじゃないかと思うのだ。

部屋単位の3Dチャットは、チャットを立体で見せてるというイメージが浮かびやすい。テキストベースのチャットシステムに3Dの皮をかぶせただけと感じてしまう。それに大してSLのようなメタバースは、まさに歩いて出会った人とコミュニケーションしている没入感が得られやすい。体験としてなんかリアルなのだ。

もちろん、ある地点から別の地点へワープしたり、飛行機もなしで空を飛んだり、リアルな世界とは違う簡便性もあるのだが、それは世界を台無しにはしていない。SLにはまった人はむしろリアルな世界でコンビニに行くのに「なぜ空を飛べないんだ」と思ってしまう(笑)。

meet-meなどは、あえてテレポートや飛行ができないようにしたという。テレポート可能にしてしまうと、一部人気スポットに人が集まってしまうからだと。しかし、電車やバスをいちいち使うのはめんどくさいし、結局それらの集中する渋谷とか新宿以外は人が集まらないのだから、意味がない気がする。

後発のメタバースは、エロを排除して企業が参加しやすい環境をというのがパターンになっている。セカンドライフ=エロというイメージがあるのだろう。しかし、仮想環境ってのは、環境であり、入れ物なのだ。排除するのではなく、受け入れた方が面白い。セカンドライフにはラブホテルもストリップ劇場も戦場もある。なにしろユーザー任せだから、なんでもできてしまうのだ。ただし、エロやバトル関係は成人向けエリアでしか運営できない。リージョンごとにPG(一般向け)とMature(成人向け)の区別が設定されているのだ。一般企業はPGエリアで営業すればいいのである。たとえばWebにはエロもあるが、だから一般企業がWebサイトを作らないという事があるだろうか。

もちろんセカンドライフは完全に自由な場所ではない。かつてはそうだったかもしれないが、現実世界との葛藤があり、徐々に出来ないことも増えてきた。代表的なのがカジノ禁止と児童アバターでのセックス禁止、あと銀行業務の禁止がある。

カジノはかつてセカンドライフの経済を支えていたといってもいい。それは大量の通貨を集め、還流させていた。しかし、もちろん大損する人も多いし、SLの通貨がリアルマネーとの相互交換可能なものであるため、法的にも問題になった。FBIが調査を始め、最終的に運営会社のリンデンラボはカジノを禁止した。
児童アバターのセックスは、当初中身が成人である限り(セカンドライフに入れるのは原則18歳以上である)「エイジプレイ」として容認されていたが、ドイツのテレビ局が児童アバター同士のセックスをすっぱ抜き、問題とされた事がきっかけで禁止されることになった。
銀行業務はについては、だれでもそのような事業を始める事ができ、ありえない高い利息をつけて通貨を集める事例が頻発。年利40%なんて例もあった。ほとんど詐欺かネズミ講である。結果的にこれも禁止され、各国で正式に許可された銀行以外はSLで銀行業務を行うことは禁止された。

ちなみに、セカンドライフRMTを公式に行っている。SL内で使う通貨がリアルマネーで買えるのは当然だか、溜まった通貨をリアルマネーにする仕組みを公式に提供しているのだ。これはPayPalを通して行われる。そのため、セカンドライフでは、アカウントを作った段階でもらえる通貨は存在しない。基本的に持ち金ゼロのスタートである。有料アカウントを取れば毎週300L$のお小遣いがもらえるが、これはもちろん払った会費以下である。
RMTが認められてるからといって、そうそう儲かるものではない。SLの物価は安いし、リアルマネー換算で生活できるほど儲ける人は一握りだ。物を作ったり商店を経営する人たちも、ほとんどはSL内で消費する分を稼ぐという範囲だろう。

そう割り切って遊ぶ分には、セカンドライフは今でも十分楽しめると思う。というか、もっと人増えて、お願い(笑)。

2009/5/29追記

2009年6月から8月を目処に、セカンドライフではMatureとPGの区別に加え、Adultカテゴリを新設することになった。フリーセックスといった性行為を公開する場所、流血、四肢切断など強い暴力表現のある場所はAdult指定となり、パスポートや運転免許で年齢認証するか、クレジットカードを登録しない限り入場できなくなる。これに伴い、SL活動の中心的レーティングはMatureとなり、PGは公共機関、教育機関、一般企業が猥雑な情報から隔離されて活動するための場となる。これまでPGエリアでお酒を提供するバーなども経営できたが、飲酒、ドラッグ、いかなるヌード表現もPGでは禁止となる。